情ない、出家を遂げても剣難に遭うて死ぬは、何ぞ前世の約束で有りましょう、実に胸が痛うて成らん、お酒を一杯下さらんか」
と其様《そん》な事を云っては酒ばかり飲んで居りますが其の夜部屋に這入って寝ますと、水司又市はぐう/\と空鼾《そらいびき》を掻いて寝た振りをして居ります。山之助おやまも寝ました様子でございますから、そうッと起きまして、おやまの寝て居ります後《うしろ》の処へ来まして、横にころりと寝まして、おやまの□□襟の間へ手を入れましたから。おやまは眼を覚《さま》し、
やま「何をなさる」
又「静かに」
やま「えゝ恟《びっく》り致しました、何をなさるので」
又「おやまさん、私《わし》はお前さんに面目ないが、実は命がけで年にも恥じずお前さんに惚れました、それ故に此の間酔った紛れに彼様《あん》な猥《いや》らしい事を云かけて、お前さんが腹を立てゝ愛想尽《あいそづか》しを云うたが、何と云われても致し方はないと私は真実お前に惚れて、是からは何処へも行く処はない身の上じゃアに依って、私がお前さんの家《うち》の厄介者になり、まア年も往《い》かぬ若い姉弟《きょうだい》衆の力になる心得で、何《ど》の様にも
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