見て逃げようと思い、只今上げます、些《ちっ》とばかり旅銀《ろぎん》も有るから差上げますから、手をお放しなさいと云うと、ほっと手が放れるが否《いな》[#ルビの「いな」は底本では「いや」]や、転がり落ちて死ぬるか生《いき》るか二つ一つと、一生懸命谷へ駈け下《お》り逃げたが、比丘尼は外《ほか》へ行《ゆ》く処はない、お前さんの処《とこ》へ来るに相違ないと思ったが、未だ来ませんか」

        四十二

やま「あれまア、余《あん》まり遅うお立で、途中で間違が有ってはいけませんと思いましたが、それは/\お比丘様は今にお出《いで》でしょうからお上りなすって……山之助お草鞋《わらじ》でおいでなさるから足を洗って」
又「いや怖い目に遭いました、あゝ心持が悪い、二三人できら/\するのを抜きました故な、此方《こっち》も命がけで切抜けました故、疵《きず》を受けたかも知れぬ、着物に血が着いて居るようで」
山「足を洗ってお上りなさい」
又「はい、私《わし》は怖くて胸の動気が止まらない、どうぞ度胸定めに酒を一杯下さい」
 と是から酒を飲んで空々しい事を云って寝ましたが、此方《こちら》は真実《まこと》と心得伯父
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