だから早く立った方が宜《よ》い、それでも義理だから伯父を喚《よ》んで詰らぬ物でも餞別など致します。これを又市が脊負《しょ》いまして暇乞《いとまごい》をして出立致しました。御案内の通りあれから白島村を出まして、青倉《あおくら》より横倉《よこくら》へ掛り、筑摩川《ちくまがわ》の川上を越えまして月岡村《つきおかむら》へ出まして、あれから城坂峠《しろさかとうげ》へ掛ります。此方《こちら》を遅く立ちましたから、月岡へ泊れば少し早いなれども丁度|宜《よ》いのを、長い峠を越そうと無暗《むやみ》に峠へ掛りますると、松柏《しょうはく》生茂《おいしげ》り、下を見ると谷川の流れも木《こ》の間《ま》より見え、月岡の市街《まち》を振返って見ると、最うちら/\灯《あかり》のつく刻限。
又「あゝまだ月が出ねえで、真闇《まっくら》になったのう」
梅「ちょっと/\又市さん、私は斯様《こんな》に暗い処《ところ》ではないと思ったが、斯様に暗くなっては提灯《ちょうちん》がなくっては歩けないよ」
又「提灯は持っている」
梅「灯火《あかり》をお点《つ》けな」
又「もう些《ちっ》と先へ行って」
梅「先へ行《ゆ》くたって真暗《まっく
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