「宜《よ》いたって、此の事が世間に知れちゃアお互に」
梅「お互だって当りまえで、馬鹿々々しいね、本当に能《よ》くあんなことが云われたと思うのだよ、私は本当に高岡を出て、お前に連れられて飛騨の高山|越《ごえ》に」
又「そんな事を云うな、己が悪いよ」
梅「唯《たゞ》悪いと云えば宜《い》ゝかと思って、お前は見捨る了簡になったね」
又「あいた/\/\痛い、捻《ねじ》り上げて痛いわ、何《なん》じゃア」
梅「痛いてえ余《あん》まりで」
又「また殴付《はりつ》けやアがる、これ己が悪いから宥《ゆる》せと云うに、おれが酔うたのだ、はっと云う機《はず》みじゃア」
梅「わたしはもう厭だ、此処《こゝ》に居るのは厭だよ、立つよ」
又「おれも立つよ、おれが悪いから宥せ」
と悋気《りんき》でいうが、世間へ漏れては成りませんから、又市は種々《いろ/\》に宥《なだ》めて、その晩は共に臥《ふせ》りましたことで、先《ま》ず機嫌も直りましたが、翌朝《よくあさ》になり、又市は此処に長く居ては都合が悪いと心得、正午《ひる》時分までは何事もなくって居りましたが、昼飯を食ってしまって急に出立と成りましたから、おやまも悦び、いやな奴
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