ら》で仕様がない、全体月岡へ泊れば宜《い》いに、この峠を夜越して来たから仕様がないよ」
又「己も越したくも何ともないわ、えゝ汝《てめえ》がぎゃア/\騒ぎ立てるから彼処《あすこ》の家《うち》にも居《お》られず、急ぐ旅ではなし、彼処に泊って彼処の物を喰って居て、お斎《とき》に出て貰った物が溜《たま》れば、後《あと》の旅をするにも宜《よ》い、後の旅が楽じゃア、それを詰らぬ事に嫉妬《やきもち》でぎゃア/\云うから居《お》られないで、拠《よんどころ》なく立って来たのだ」
梅「よんどころなく立ったにもしろ月岡へ泊れば宜《い》いのに、夜になって峠を越すのは困るね」
又「困って悪ければ是から別れよう」
梅「別れて何《ど》うするの」
又「汝《てめえ》おれが横面《よこッつら》を宜くも人中で打《ぶ》ったな」
梅「打ったってお前そんな事を何時《いつ》までも腹を立って居るがね、私も腹立紛れに打ったのじゃアないか、彼《あ》の娘《こ》が義理ずくで、命を助けられた恩義が有るから、お前の云う事を聴けば見捨てかねないよ」
又「仮令《たとえ》見捨てると云ったにもせよ、何故|苟《かりそめ》にも亭主の横面を打《う》つという事が
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