さいよ、私は少し云う事が有りますから彼方《あちら》へ行って居て下さい、余《あん》まりやれこれ云って下さると増長するのでございますから、どうぞ其方《そちら》へ……又市さん今の真似はあれは何《なん》だえ」
又「酔うたのだよ、酔うて居るから宥《ゆる》せと云うに……困ったね、突然《いきなり》打《ぶ》つとは酷《えら》い、疵《きず》が出来たらどうも成らん、みともないわ」
梅「何だえ今の真似は、ようお前|幾歳《いくつ》にお成りだよ、命を助けたの何のと恩義に掛けて、あの娘《こ》が彼様《あんな》に厭がるものを無理に引寄せてなぐさむ了簡かえ、呆れた人だね、怖い人だね」
又「怖い事は有りやせん、若い娘にからかうは酒飲の当り前だ」
梅「当り前だって宿屋の女中や芸者じゃアない、一軒の主《あるじ》じゃアないか、然《そ》うして姉弟《きょうだい》で堅くして彼《あ》アやって、温和《おとな》しくして居る堅人《かたじん》だよ、伯父さんも村方で何《なん》とか彼《かん》とか云われる人で失礼ではないか、お前さんを主人の様に、姉弟二人で私の事を尼様々々と大事に云って呉れるじゃアないか、それに恩を被《き》せてあんな真似をすれば、今ま
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