な」
やま「どうぞ召上って」
 となみ/\とつぐ。素《もと》より好きな酒、又市二三杯飲むうち、少し止めて居たから顔へ色がぼうと出ましたけれども、桜色という訳にはいきません、栗皮茶《くりかわちゃ》のような色に成りましたが、だん/\酔《えい》が廻りますと、もとより邪淫奸智《じゃいんかんち》の曲者《くせもの》、おやまは年齢《とし》二十二でございます、美くしい盛りで、莞爾《にっこり》と笑います顔を、余念なく見て居りましたが、
又「あゝ見惚《みと》れますねえ、お前さんの其の、品の良いこっちゃなア…あゝ最う十分に酔《え》いました、もしおやまさん/\」
やま「はい」
又「あの何《なん》で、この先に伯父さんが有るが、彼《あれ》はあなたの真実の伯父さんかえ」
やま「はい私《わたくし》の真実の伯父でございます」
又「御両親はないのかえ」
やま「はい両親はまアない様なものでございます、母は亡なりましたが、親父は私《わたくし》の少《ちい》さい時分行方知れずに成りましてから、いまだに音沙汰がございません、死んだと存じまして出た日を命日として居りますが、ひょっとして存命で帰って来たらと姉弟《きょうだい》で信心して
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