「いや誠に有難う、大した事ではなし、一体酒が好《すき》で旅をするには一杯飲めば気が晴れるから、宿で一杯出せば尼様に隠して内所《ないしょ》で飲むこともある、これは/\有難う……えゝお前はまア姉弟衆《きょうだいしゅう》二人ながら仲よう稼ぎなさる、暗いうちから起きて糸を繰ったり機《はた》を織ったり、また山之助さんは牛馬《ぎゅうば》を牽《ひ》いて姉弟で斯う稼ぐ人は余り見た事がない、実に感心の事じゃ」
やま「いゝえもう二人ながら未だ子供のようでございます、彼《あれ》が年も往《い》きませんから届きません、只私を大事にして呉れます、日々あゝやって御城下へ参りまして、荷を置いて参ります、又|彼方《あちら》から参る物は此方《こちら》へ積んで参りまして少々の賃銭《ちんせん》を戴きます、はい宜く稼ぎますが、丁度飯山の御城下へまいり、お酒の美《よ》いのを買って参りましたが、お肴は何《なん》にもございませんが、召上って下さいまし」
又「いや此処《こゝ》らは山家でも御城下近いから便利でございます、一杯頂戴致しましょう、是ははい御馳走に成ります……一杯|酌《つ》いで下さい、四五日酒を止《や》めて居たので酔いはせんか
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