があるから、私が買って居る馴染の遊女だから貴様に出ないのだから、小増の事は諦めてくれ、是は私が馴染の婦人だから」
又「へえー左様で、貴方のお馴染で、ふうー」
小「一寸《ちょっと》水司はん、私《わちき》の大事のね、深い中になって居るお客というのは此の中根はんで、中根はんに出ている私がお前《ま》はんの様な下役に出られますかねえ、宜《よ》く考えて御覧なはいよ、出たくも出られませんからさ、又お前《まえ》はんの様な人に誰が好いて出るものかねえ、お前顔を宜く御覧、あの己惚鏡《うぬぼれかがみ》で顔をお見よ、お前鏡を見た事がないのかえ、火吹達磨《ひふきだるま》みたいな顔をしてさア、お前《ま》はんの顔を見ると馬鹿/\しくなるのだよう」
と云われるから胸に込上げて、又市|逆《のぼ》せ上《あが》って、此度《こんど》は猶《なお》強く藤助の胸ぐらを取ってうーんと締上げる。
藤「あなたいたい……私《わたくし》を、どう…」
又「黙れ、今中根様の仰せらるゝ事を手前存じて居《お》るか、一つ屋敷の者には出ない、上役がお愛しなさる遊女をなぜ己に出した」
藤「あいた……これはあなた気が遠くなります、お助け下さい、死にます」
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