た傳次の襟髪《えりがみ》を取って引倒し、足を押えて居た庄吉の頤《あご》を土足で蹴倒しますると、柳田典藏は驚き、何者だと長いのを引抜いて振上げる。此方《こちら》も透《すか》さず道中差をすらりっと引抜き、
又「何者とは何《なん》だ、悪い奴らだ、繊弱《かよわ》い女を連れて来て、手前達《てまいたち》が何か慰もうと云うのか、ひい/\泣く者を不埓な奴だ、旅だから許してやる、さっ/\と行《い》け、兎《と》や角《こ》う云えば承知致さぬぞ、さっさっと行け」
傳「あゝ痛《いた》え、突然《だしぬけ》に無闇と蹴やアがって、飛んだ奴だ、手前《てめえ》は訳を知るめえが己達は勾引《かどわかし》でも何でもねえ、この女《あまっちょ》には訳があって旦那に済まねえ廉《かど》が有るから、此方《こっち》が為になる様に納得させようと思って居るのに、きいきい云やアがるから嚇《おど》しに押えるのだ、お前《めえ》は何も知らねえで、何もいらざる所へ邪魔アしやアがるな、旅の者だと吐《ぬか》しやアがる手前は」
 と月影で顔を見合せると、互に見忘れませぬ。又市も傳次も見たようなと思うと、庄吉は宗慈寺に旧来奉公して居りましたから永禪和尚の顔を能
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