うしろ》の三峰堂《みみねどう》の中に雨止《あまやみ》をしていた行脚《あんぎゃ》の旅僧《たびそう》、今一人は供と見えて菅《すげ》の深い三度笠《さんどうがさ》に廻し合羽で、柄前《つかまえ》へ皮を巻いて、鉄拵《てつごしら》えの胴金《どうがね》に手を掛け、千草木綿《ちくさもめん》の股引に甲掛草鞋穿《こうがけわらじばき》で旅馴れた姿、明荷《あけに》を脇に置き、一人は鼠の頭陀《ずだ》を頸《くび》に掛け、白い脚半《きゃはん》に甲掛草鞋。
男「あゝ気の毒な、助けて遣《や》らん」
 と飛出しましたのは前《ぜん》申上げました水司又市の永禪和尚、彼《か》の川口の薬師堂に寺男になって居ると、尼様に寺男が御経を教えて居る、あれは寺男が本当の坊主の果で有ろうと段々噂が高くなり、薄気味が悪いから、川口を去って越後から倉下道《くらげみち》を山越をして信濃路へ掛って、葉広山の根方を通り掛ると村雨に逢い、少しの間|雨止《あまやみ》と三峰堂へ這入って居ると、雨も止みましたから、支度をして出ようと思う処へ人殺し、殺してしまえと云う女の鉄切《かなき》り声ゆえ、つか/\と飛出しまして、又市は物をも言わずに、娘の腕を押えて居りまし
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