お相手を致すような芸者や旅稼ぎの娼妓《じょうろ》とは違います、余りと申せば失礼を知らぬ馬鹿/\しいお方だ」
三十五
傳「あれ、それじゃア姉《ねえ》さん、だがね、困るねどうも、然《そ》うお前さん言ってしまっては……何とか云い様が有りそうなものだ、何《ど》うも困るね、左様《そう》じゃア」
やま「左様じゃアって考えて御覧なさい、お前さんは頼まれたか知らないが、此処《こゝ》にいらっしゃる方は大小を差した立派なお武家様で、人の娘を知りもしない処《ところ》へ無理遣《むりや》りに引摺込《ひきずりこ》んで、飲めもしない者に盃をさして何うなさる、彼《あ》の方は本当に馬鹿々々しくて、私《わたくし》も武士の家に生れたが、武家はそんな乱暴な馬鹿な真似は為《し》はしません、余《あんま》り馬鹿な事で呆れて愛想もこそも尽果てた厚かましい人だ」
典「なに厚かましいと、何《なん》だ、馬鹿々々しいとは何だ、否《いや》なら否で宜しい、無理に嫁に貰おうと云う訳ではないが、手前が……」
やま「厚かましいから厚かましいと申しました、袖をお放しなさいよ」
と袖を引張るのを、
やま「お放しなさい」
と立上りな
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