んで、今日も柳田さんがお前さんを呼んでくれと云ったのではない、全く私《わっち》の了簡で、旦那は誠に感心な娘だと云うので、どうも十六年も音信《おとずれ》をしない親父《おやじ》を待って、それ程までに元服もせずに居るとは、実に孝行な事だから嫁が厭なら宜しいが、実にその志操《こゝろざし》に傳次や尚《なお》惚《ほれ》るじゃアねえかと斯《こ》ういう旦那の心持で、誠に尤《もっとも》だからそう云う事ならせめて盃の一つも献酬《とりやり》して、眤近《ちかづき》に成りたいと云うので、決して引張込んで何う斯うすると云う訳じゃアないが、お前さんが得心して嫁になれば弟も引取って世話をすると云う、実に仕合せだから、うんと云ったら宜《い》いじゃアないか」
やま「何をうんと云うのでございますえ、私《わたくし》の身の上は伯父に」
傳「それは伯父さんに聞いたよ、遁辞《いいぬけ》で伯父さんに托《かこつ》けると云う事は知ってる」
やま「知って居るなれば何も仰しゃらんでも宜《い》いじゃア有りませんか、私《わたくし》も今は浪人しては居りますけれども、やはり以前は少々|御扶持《ごふち》を頂きました者の娘でございます、あなた方の御酒の
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