御膳を」
と云うのを傳次は聞いて、
傳「いけねえね、そんな事ばかり云って困るな、めかして居て……一寸姉さんお盃を、お酌を致しますから」
やま「何をなさる、お前さん方は何をなさるのでございますえ、私《わたくし》の様な馬鹿でございますけれども、あなた方は何もお近眤《ちかづき》になった事もない方が無理遣《むりやり》にこんな処へ手を持って、厭がる者を引張込んで、人の用の妨げをして、酒を飲めなんて、私《わたくし》は酒のお相手をする様な宿屋や料理茶屋の女とは違います、余り人を馬鹿にした事をなさいますな」
傳「旦那、腹を立っちゃアいけねえ……姉さん然《そ》う云っちゃアから何うも仕様がねえ、それは然うだがね姉さん人の云う事をお聞きなさいよ、この旦那は早く言えばお前さんに惚れたんだ……旦那、黙って其方《そっち》においでなせえ、お前さん口を出しちゃアいけねえ、黙って頭を叩いておいでなさい…姉さん、人の云う事をお聞きよ、此間《こないだ》伯父さんへ掛合ったのだ、宜《い》いかえ、処がそれはお父《とっ》さんが居ねえので元服もせずに待って居ると云うお話だから、その事を柳田さんに話すと、それは御尤《ごもっとも》だて
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