傳次さん此間はお草々《そう/\》でしたと云えば宜《い》い、然《そ》うすれば私《わっち》が行ったてえのが通じるのだから、彼処《あそこ》へ往って一寸私に挨拶するだけ」
やま「いけませんよ」
傳「いけねえてえ私《わっち》が困るから、野暮《やぼ》なことを云わずにお出でなさい」
と無理に引摺《ひきず》り込んだから仕方なしにひょろ/\蹌《よろ》けながら上《あが》り口《ぐち》へ手を突くと、臀《しり》を持って押しますから、厭々上って来ると、柳田典藏は嬉しいが満ちてはっと赤くなり、お世辞を云うも間が悪かったか反身《そりみ》になって、無闇に扇で額を叩き、口も利かずに扇を振り廻したりして、きょと/\して変な塩梅《あんばい》で有りますから、
傳「旦那、旦那お連れ申しました、此方《こちら》へ/\、ぐず/\して居てはいけねえ、姉《ねえ》さんに御挨拶をさ」
典「これは何うも誠に、何か、御信心参りにお出での処《ところ》を斯様なる処へお呼立て申して甚だ御迷惑の次第で有ろうと申した処が、何か、御迷惑でも御酒を飲《あが》らぬなれば御膳でも上げたいと思って、一寸これへ、何うも恐入ります、一寸只御酒はいけますまいから、じゃア
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