ア当座十金差上げるつもりで目録包にして此処《こゝ》に有るので」
傳「へえー、からどうも仕様がねえね、誠に何うもいけません、幾ら金を包んでも仕様がねえあれは」
典「何ういう訳で」
傳「何うたっていけません、誠に話は無しだねえ、親父が十六年あとに行方知れずに成ったから、親父の帰《けえ》らぬうちは嫁にも行《い》かぬ聟も取らぬ、元服もしねえ、親父に聴かねえうちにしては済まぬてえ彼《あ》れは変り者《もん》でげす、いけませんよ、へえ」
典「いかぬと云うのか」
傳「えー往《い》かねえと云うのでげす」
典「左様か仕様がない、それは仕方がない、それは先方《むこう》で厭《いや》なんでげしょうが、然《そ》う云わなければ断り様がないからだ、今時の者が親父が十六年も行方知れず音沙汰のない者を待って元服もせずに居るなんて、そんなら二十年も三十年も四十年も帰らぬ時は何うする、白髪《しらが》になって島田で居る訳にもいかぬが、それは先方が断り様がないから、然う云うのだ、宜しい/\、宜しいけれども実は事を極めて来たら直に礼をする心得で、ちゃんと金も包んで置いたが、仕方がない、是までの事だ」
傳「から何うも仕様がねえ変り者
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