くれゝば大《おお》きに宜しいが、大勢打寄って欺くから…斯様《かよう》なことを腹立紛れにしたのは私が悪かった」
小「悪かったじゃアないよ、私《わちき》はお前《ま》はんのような人は嫌いなの、お前大層な事を云っているね、金ずくで自由になるような私《わちき》やア身体じゃアないよ、二十両ばかりの端金《はしたがね》を千両|金《がね》でも出したような顔をして、手を叩いたり何かしてさ、騒々しくって二階中寝られやアしないよ、お前はんに返すから持って帰んなまし、お前はんのような田舎侍は嫌いだよ」
 と云いながら又市の膝へ投付けて、
小「いけ好かないよう、腎助《じんすけ》だよう」
 と部屋着の裾《すそ》をぽんとあおって、廊下をばた/\駈出して行った時は、又市は後姿《うしろすがた》を見送って、真青《まっさお》に顔色《がんしょく》を変えて、ぶる/\慄《ふる》えて、うーんと藤助の腕を逆に捻《ねじ》り上げました。
藤「あいた/\/\、あなた、あいた……そんな乱暴なことをしては困りますねえ、私《わたくし》などの云う事を聞く妓《こ》ではありませんから」
又「田舎侍は厭《いや》だと云うは、素《もと》より其の方達も心得|居
前へ 次へ
全303ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング