んで、両肩の脇へ一寸《ちょっと》挟みまして、先をぱらりと下げて居ります。懐には合口《あいくち》をのんで居る位に心掛けて、怪しい者が来ると脊負《しょっ》て居る包を放《は》ねて置いて、懐中の合口を引抜くと云う事で始終|山国《やまぐに》を歩くから油断はしません。よく旅慣れて居るもので御座ります。一体飛騨は医者と薬屋が少ないので薬が能《よ》く売れますから、寒いのも厭《いと》わずになだれ下りに来まして。
薬屋清「やア御免なさいませ」
又「おやこれはお珍らしい……去年お泊りの清兵衞さんがお出《いで》なすった、さア奥へお通りなさい、いやどうも能く」
清「誠に、是れははや、去年は来《け》まして、えゝ長《なが》えこと御厄介ねなり居《お》りみした、いやもう二度《ねど》と再び山坂を越えて斯《こ》う云う所へは来《け》ますまいと思うて居りみすが、又慾と二人連れで来《け》ました……おや婆様この前は御厄介になりみした、もうとても/\この山は下りは楽だが、登りと云うたら足も腰もめきり/\と致して、やアどうも草臥《くたぶ》れました、とても/\」
又「今夜はお泊りでげしょう」
清「いや然《そ》うでない、今日は切《せ》みて
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