二十五

又「旦那此の婆《ばゞあ》はもと根津の増田屋で小澤《こさわ》と云った女郎《じょうろ》でございます」
婆「およしよ爺さん」
又[#「又」は底本では「婆」]「いゝやな、昔は鶯《うぐいす》を啼かして止まらした事もある……今はこんな梅干婆で見る影も有りませんがね、これでも二十三四の時分には中々薄手のあまっちょで、一寸《ちょっと》その気象が宜うがしたね、時々、今日は帰さねえよと部屋着や笄《こうがい》などを質に入れて、そうして遊んで呉れろと云うから、ついとぼけて遊ぶ気になり、爪弾《つめびき》位は静かに遣《や》ると云う、中々|粋《いき》な女でございます」
婆「およしよう、詰らない事を言って間が悪いやね、恥かしいよ」
又「恥かしいも無いものだ、もう恥かしいのは通り過ぎて居るわ」
永「おや左様かえ、何でも然《そ》うじゃろうと思った、中々お前苦労人の果でなければ、あの取廻しは出来ぬと思った、あゝ左様かえ、一旦泥水に這入った事がなければなア」
梅「おや然うかね、長く御厄介になって見ると私はどうも御当地の方じゃないと実は思って居ましたが、然うでございますか、不思議なものだねえ増田屋に、どう
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