ったしお経もお読みなさいますが、お比丘尼様の方はそう云う事をなさる所を見ませんから、それで貴方は御出家お比丘尼様は此の頃御剃髪と思いまして」
永「それは門前の小僧習わぬ経を誦《よ》むで、寺にいると自然と覚えて読んで見たいのだが、また此方《こなた》は御出家じゃアが、もう旅へ出ると経を読まぬてえ、是が紺屋《こうや》の白袴《しらばかま》という譬《たと》えじゃアのう」
又「そうでございますかえ、私《わたくし》はまた御苦労の果じゃア無いかと思って、のう婆さん」
婆「お止しよ、ひちくどくお聞きで無いよ、欝陶しく思召《おぼしめ》すよう」
又「でもお互に昔は……旦那|私《わたくし》はねえ、ちょっと気がさすので、然《そ》ういう事を云いますが、この婆《ばゞあ》を連れて私が逃げまする時にゃア、この婆が若い時分だのにくり/\坊主に致しましてねえ、私も頭を剃《す》っこかして逃げたことが有るね、えゝ是は昔話でございますがねえ」
婆「爺さんお止しよ、詰らない事を言い出すね、よしなよ」
又「なに、いゝや、旦那の御退屈|凌《しの》ぎだ、爺《じゞい》婆《ばゞあ》の昔話だから忌《いや》らしい事も何もねえじゃねえか」
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