ぬように取片付《とりかたづ》けて置いた、なそれ、縁の下へ彼《あ》の様に入れて置いたから知れやアせん、江戸と違って犬は居ず、埋《うず》めるはまア後《あと》でも宜《よ》い、お前は先へ帰りな」
梅「はい/\」
 と云いますが、お梅は此処《こゝ》に長居もしませんのは脛《すね》に疵《きず》持ちゃ笹原《さゝはら》走るの譬《たと》えで、直《すぐ》に門前へ出まして、これからお繼を捜して歩きましたが、何処《どこ》へ行ったか頓《とん》と知れなかったが、漸《ようや》く片原町《かたはらまち》の宗円寺《そうえんじ》という禅宗寺から連れて来ました。この宗円寺の和尚さんは老人でございますからお繼を可愛がりますので、此の寺に隠れて居りましたのを連れて帰り、
梅「まアお前何処へ行って居たかと思って方々《ほう/″\》捜したよ」
繼「はい宗円寺様へ行って居たのでございますわ」
梅「何でお前逃出したのだよ」
繼「あのお母様《っかさん》怖いこと、宗慈寺の和尚様が薪割を提《さ》げて殺して仕舞うってね、怖くって一生懸命に逃げたけれど、行《ゆ》く処がないから宗円寺様へ逃込んだの」
梅「お前本当じゃアないよ、嚇《おど》かしだよ、からかったのだね」
繼「いゝえ、おからかいでないの、一生懸命の顔で怖いこと/\」
梅「一生懸命だって、お前《まい》を可愛がって御供物《おもりもの》や何か下さる旦那さまだもの、ほんのお酒の上だよ」
繼「然《そ》う、私《わたし》ゃねお父様《とっさん》を捜しに往ったの」

        二十

梅「お父様《とっさん》はあのお商いも隙《ひま》だから、あの金沢から山中の温泉場の方へ商いに往って、事に依ったら大阪へ廻って買出しを致《し》たいからと云って、些《ちっ》とばかり宗慈寺様からね資本《もとで》を拝借したのだよ、そうして買出しかた/″\お商いに往ったから、半年や一年では帰らないかも知れないよ、その代り確《しっ》かり仕入れて、以前《もと》の半分にも成れば、お繼にも着物を拵《こしら》えて遣《や》られると云って、お前が可愛いからだね」
繼「そう、お父様が半年も帰らないと私は一人で寝るの」
梅「宜《い》いじゃないか、私が抱いて寝るから」
繼「嬉しい事ね、あの他処《よそ》の子と異《ちが》って私は少《ちい》さい時からお父様とばかり一緒に寝ましたわ、お母《っか》さんと一緒に寝られるなら何時《いつ》までもお父様は
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