いな」
十八
永「貸して遣《や》ろうとも、お前が資本《もとで》にするなれば貸しましょう、宜《よ》いわ、宜いが然《そ》う云う事は緩《ゆっ》くり相談しなければならん、何《ど》の様《よう》にも相談しよう……おゝ酒が無くなったが折角七兵衞さんが来てのじゃ、酒がなければ話も出来ぬ、お梅さん御苦労ながら、門前では肴《さかな》が悪いから重箱を持って瞽女町へ往《い》って、うまい肴を買って七兵衞さんに御馳走して……お前遠くも瞽女町へ往って来て呉れんか、とてもうまいものは近辺にはないからのう」
梅「じゃア往って来ましょう」
七「往って来《き》ねえ、御馳走に成るのだから……旦那え、お梅も追々《おい/\》婆アに成りましたが、あの通りの奴でね、また私も萬助より他に馴染がないので心細うございます、お梅も此方《こちら》へ上《あが》るのを楽しみにして居ります、旦那可愛がって遣って、あんな奴でも一寸《ちょっと》泥水へ這入った奴で、おつう小利口なことをいうが、人間は余り怜悧《りこう》ではないがね、もし旦那、お相手によければ差上げますぜ、だが上げる訳にもいきませんかね、私《わたくし》も苦労を腹一杯した人間ですから、旦那が私《わたし》を贔屓にして下されば、話合いで貴方《あなた》は隠居でもなすってねえ、隠居料を取って楽に出来るお身の上に成ったら、その時にゃア御不自由ならお梅は仕事に上げッ切《きり》にしても構わねえという心さ」
永「そりゃまさか他人《ひと》の女房を借りて置く訳には往《い》かんが、仕事も出来る大黒の一人も置きたいが、他見《たけん》が悪いから不自由は詮事《しょこと》がないよ」
七「もしそれはお前さんの事だから屹度《きっと》差上げますよ、それにお梅はお前さんに惚れて居りますぜ、ねえ宗慈寺の旦那様は何《ど》うも御苦労なすったお方だから違う、あれでお頭《つむり》に毛が有ったら何うだろうなんぞと云いますぜ」
永「こりゃ、その様な詰らぬ事を云うて」
七「それは女郎《じょうろ》の癖が有りますから……浮気も無理は無いのです、もう酒は有りませんか」
永「今来るが、私《わし》はねえ酒を飲むと酒こなしを為《し》なければいかぬから、腹こなしを為《す》る、お前見ておいで」
と藁草履《わらぞうり》を穿《は》いてじんじん端折《ばしょり》をして庭へ下りましたが、和尚様のじんじん端折は、丸帯《まるぐけ》の間
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