点]のつかない事に成りみしたと云う訳は、お前《ま》さん宗慈寺の永禪和尚と云う者はえらい悪党でありみすと、前町の藤屋七兵衞と云う荒物屋が有って、その女房《じゃアまア》のお梅というのと悪《われ》え事をしたと思いなさませ、永禪和尚とお梅と間男をして居りみして、七兵衞が在《あ》っては邪魔になるというて、夫《とゝま》の七兵衞を薪割で打殺《ぶちころ》し、本堂の縁《いん》の下へ隠《かこ》したところが、悪《われ》え事は出来《でけ》ぬものじゃなア、心棒が狂い曲《まご》うたから、まア寺男からお前《ま》さんの子じゃア有るけれども眞達さんまでも悪《われ》え事に染《そま》りまして、それからお前《ま》さん此の頃寺で賭博《ばくち》を為《し》ますと」
又「賭博を、ふうん/\成程」
清「ところがお前《ま》さん二番町の小川様から探索が届いて居《い》るもんじゃから直《すぐ》に手が這入って、手が這入ると寺男の庄吉という者がお前《ま》さん本堂の床下《よかした》へ逃《の》げたところが、先に藤屋七兵衞の死骸《しげえ》が隠《かこ》して在《あ》るのを死骸《しげえ》とは知らいで、寺男の庄吉が先へ誰か逃込《のげこ》んで床下《よかした》に此の通りちま/\と寝《ねな》って居《お》りみすと思って、帯《おべ》の処へ後生大事にお前《ま》さん取付《とッつ》いて居りみすと、さ、するとお前《ま》さん出ろ/\と云うので役人《やこねん》が来《け》て庄吉の帯《おべ》を取って引《ひき》ずり出すと、藤屋の夫《とゝま》の死骸《しげえ》が出たと思いなさませ、さアこれはうさん[#「うさん」に傍点]な寺である、賭博どころではない、床下《よかした》から死骸《しげえ》が出る所を見ると、屹度《けっと》調べを為《し》なければ成らぬと、お役所《やこしょ》まで参《まえ》れと忽《たちま》ちきり/\っと縛《いまし》められて、庄吉が引かれみしたと、もう事が破れたと思って永禪和尚が藤屋の女房《じゃアまア》の手を取って逃《の》げた時に、お前《ま》さんの御子息の眞達どんも一緒に逃《の》げたに相違ないのじゃが、それが此の世の生涯で、大沓の渡しを越える渡口の所に、いや最《も》うはや見る影もない姿で誠に情《なさけ》ない、それは/\迚《とて》も/\何とも云い様のない姿に斬殺《けれころ》されて居りみしたが」
又「えー忰が斬殺《きりころ》されて」
清「いやもう何とも」
又「誰が殺しました
前へ
次へ
全152ページ中61ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング