子か何《なに》かあるだらう……最《も》う皆《み》な賓客《きやく》に持《も》たして遣《や》つてしまつたか……困つたなア……何《なに》かないかなア……ンー一|軒《けん》おいて隣家《となり》の大仏餅《だいぶつもち》でも宜《よ》い、仕方《しかた》がない……宜《よ》しく此餅《これ》を皆《みんな》皿《さら》に積《つ》んでの……さア何《ど》うか不味《つまら》ない物だが子供衆《こどもしう》に皆《み》な上《あ》げて下《くだ》さい。
 乞「どうも有難《ありがた》う存《ぞん》じます……左様《さやう》なら御遠慮《ごゑんりよ》なしに頂戴《ちやうだい》致《いた》しますと、亭主《ていしゆ》の河合金兵衛《かはひきんべゑ》が茶《ちや》を点《た》つてる間《あひだ》に、小丼《こどんぶり》を前《まへ》に引寄《ひきよ》せて乞食《こじき》ながらも、以前《いぜん》は名のある神谷幸右衛門《かみやかうゑもん》、懐中《ふところ》から塵紙《ちりがみ》を出《だ》して四つに折《を》つて揚子箸《やうじばし》で手探《てさぐ》りで、漸《や》うく餅《もち》を挟《はさ》んで塵紙《ちりがみ》の上《うへ》へ載《の》せて忰《せがれ》幸之助《かうのすけ》へ渡し
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