はないかえ。乞「へい……能《よ》う御存《ごぞん》じさまでございます、これは貴方《あなた》、遠州所持《ゑんしうしよぢ》でございまして、其後《そののち》大《たい》した偉《えら》い宗匠《そうしやう》さんが用《もち》ひたといふ品《しな》でございます。主「ンー……。乞「これは私《わたくし》の大事《だいじ》な品《しな》でございまして、当時《いま》斯《か》う零落《おちぶ》れまして、値《ね》を高く買《か》はうといふ人がございますけれども、なか/\手離《てばな》しませぬで……。主「どうもマア、乞食《こじき》になつても砂張《すばり》の建水《みづこぼし》をすてないといふところは、真《しん》のお茶道人《ちやじん》でげすな、お流儀《りうぎ》は…乞「へい千家《せんけ》でございます。主「誰方《どなた》の御門人《ごもんじん》で……。乞「はい実《じつ》は……川上宗治《かはかみそうぢ》の弟子《でし》でございます。主「フーン……お姓名《なまへ》は聴《き》いても仰《おつし》やるまいね。乞「へい/\もう姓名《なまへ》を申《まう》すのは、お恥《はづ》かしうて申《まう》せませぬが、斯様《かやう》に御親切《ごしんせつ》に上《うへ》へ
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