、大仏餅《だいぶつもち》と云《い》ふ餅屋《もちや》がありました。余《あま》り美味《おい》しくはございませんが、東京見物《とうきやうけんぶつ》に来《く》る他県《たけん》の方々《かた/″\》が、故郷《くに》へ土産《みやげ》に持《も》つて往《い》つたものと見えまする。其大仏餅屋《そのだいぶつもちや》の一軒《いつけん》おいて隣家《となり》が、表《おもて》が細《こまか》い栂《つが》の面取《めんど》りの出格子《でがうし》になつて居《を》りまして六尺《いつけん》、隣《とな》りの方《はう》が粗《あら》い格子《かうし》で其又側《そのまたわき》が九尺《くしやく》ばかりチヨイと板塀《いたべい》になつて居《を》る、無職業家《しもたや》でございまする。表《おもて》には河合金兵衛《かはひきんべゑ》といふ標札《へうさつ》が打《う》つてござります。マア金貸《かねかし》でもして居《を》るか、と想像《さうざう》致《いた》されます家《うち》、丁度《ちやうど》明治三年の十一月の十五日、霏々《ちら/\》と日暮《ひぐれ》から降出《ふりだ》して来《き》ました雪が、追々《おひ/\》と積《つも》りまして、末《すゑ》には最《も》う「初雪
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