方《はう》は極《ごく》下手《へた》で、病人に針《はり》を打ちますと、それがためお腹《なか》が痛くなつたり、頭痛の所へ打ちますと却《かへつ》て天窓《あたま》が痛んだり致しますので、あまり療治《れうぢ》を頼《たの》む者はありません。すると横浜《よこはま》の懇意《こんい》な人が親切に横浜《よこはま》へ出稼《でかせ》ぎに来《く》るが宜《い》い、然《さ》うやつてゐては何時《いつ》までも貧乏してゐる事では成《な》らん、浜《はま》はまた贔屓強《ひいきづよ》い処《ところ》だからと云《い》つてくれましたので、当人《たうにん》も参《まゐ》る気になりましたが、横浜《よこはま》へ参《まゐ》るには手曳《てひき》がないからと自分の弟の松之助《まつのすけ》といふ者を連《つ》れまして横浜《よこはま》へまゐりまして、野毛《のげ》の宅《うち》へ厄介《やつかい》になつて居《を》り、せめて半年か今年一年|位《ぐらゐ》稼《かせ》いで帰《かへ》つて来《く》るだらうと、女房《にようばう》も待つて居《を》りますと、直《すぐ》に三日目に帰《かへ》つてまゐりました。鼻の尖頭《あたま》へ汗をかき、天窓《あたま》からポツポと煙《けむ》を出し
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