小春「お前《まへ》は眼《め》が開《あ》いてちよいと子柄《こがら》を上《あ》げたよ、本当《ほんたう》にまア見違《みちが》いちまつたよ、一人で来《き》たのかい、なに近江屋《あふみや》の旦那《だんな》を、ムヽ失《はぐ》れて、然《さ》うかい、ぢやア何処《どこ》かで御飯《ごぜん》を食《た》べたいが、惣《そう》ざい料理《れうり》もごた/\するし、重《おんも》りする処《ところ》も忌《いや》だし、あゝ釣堀《つりぼり》の師匠《しゝやう》の処《ところ》へ往《ゆ》かうぢやアないか。梅「へえゝ釣堀《つりぼり》さまとは。小「何《なん》だね釣堀《つりぼり》だね。梅「有難《ありがた》い……私《わたし》は二十一|日《にち》御飯《ごぜん》を食《た》べないので、腹《はら》の空《へ》つたのが通《とほ》り過《す》ぎた位《くらゐ》なので、小「ぢやア合乗《あひの》りで往《ゆ》かう。と是《これ》から釣堀《つりぼり》へまゐりますと、男女《なんによ》の二人連《ふたりづれ》ゆゑ先方《せんぱう》でも気《き》を利《き》かして小間《こま》へ通《とほ》して、蜆《しゞみ》のお汁《つけ》、お芋《いも》の※[#「睹のつくり/火」、第3水準1−87−52]転《につころ》がしで一猪口《いつちよこ》出ました。小「さ、お喫《た》べよ、お前《まへ》の目《め》が開《あ》いて芽出度《めでた》いからお祝《いは》ひだよ、私《わたし》がお酌《しやく》をして上《あ》げよう……お猪口《ちよこ》は其処《そこ》に有《あ》らアね。梅「へえゝ是《これ》がお猪口《ちよこ》……ウンナ……手には持慣《もちつ》けて居《ゐ》ますが、巧《うま》く出来《でき》てるもんですな、ヘヽヽ、是《これ》はお徳利《とくり》、成程《なるほど》此《こ》ン中《なか》からお酒《さけ》が出るんで、面白《おもしろ》いもんですな。小「何《なん》だよ、猪口《ちよこ》の中へ指を突《つ》つ込《こ》んでサ、もう眼《め》が開《あ》いて居《ゐ》るから、お酒《さけ》の覆《こぼ》れる気遣《きづか》ひはないは。梅「へゝゝ不断《ふだん》やりつけてるもんですから……(一|口《くち》飲《の》んで猪口《ちよこ》を下に置き)有難《ありがた》う存《ぞん》じます、どうも……。小「冷《さめ》ない中《うち》にお吸《す》ひよ、お椀《わん》を。梅「へえ是《これ》がお椀《わん》で……お箸《はし》は……これですか、成程《なるほど》巧《うま》く出
前へ
次へ
全15ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング