来《でき》て居《ゐ》ますな……ズル/\ズル/\(汁を吸ふ音)ウン結構《けつこう》でございます……が、どうもカ堅《かた》くつて……。小「ホヽいやだよ此人《このひと》は、蜆《しゞみ》の貝《かひ》ごと食《た》べてさ……あれさお刺身《さしみ》をおかつこみでないよ。梅「へえ……あゝ好《い》い心持《こゝろもち》になつた。と漸々《だん/″\》盞《さかづき》がまはつて参《まゐ》るに従《したが》つて、二人とも眼《め》の縁《ふち》ほんのり桜色《さくらいろ》となりました。小「梅喜《ばいき》さん、本当《ほんたう》にお前《まへ》男振《をとこぶり》を上《あ》げたよ。梅「へえ私《わたし》は随分《ずゐぶん》好《い》い男《をとこ》で、先刻《さつき》鏡《かゞみ》でよく見ましたが。小「お前《まへ》に去年《きよねん》私《わたし》が寸白《すばこ》で引《ひ》いてゐる時分《じぶん》、宅《うち》へ療治《れうぢ》に来《き》たに、梅喜《ばいき》さんの療治《れうぢ》は下手《へた》だが、何処《どこ》か親切《しんせつ》で彼様《あん》な実《じつ》の有《あ》る人はないツて、宅《うち》の小梅《こうめ》が大変《たいへん》お前《まへ》に岡惚《をかぼ》れをしてゐたよ、あれで眼《め》が有《あ》つたら何《ど》うだらうと云《い》つたが、眼《め》が開《あ》いたから誰《だれ》でも惚《ほ》れるよ、私《わたし》は本当に岡惚《をかぼ》れをしたワ。梅「えへゝゝゝ冗談《じようだん》云《い》つちやアいけません、盲人《めくら》にからかつちやア困ります。小「盲目《めくら》だつて眼《め》が開《あ》いたぢやアないか、冗談《じようだん》なしに月々《つき/″\》一|度《ど》位《ぐらゐ》づゝ遊んでおくれな、え梅喜《ばいき》さん。梅「あなた、そりやア本当でげすかい。小「本当にも嘘《うそ》にも女《をんな》の口から此様《こん》なことを云《い》ひ出すからにやア一生懸命だよ。梅「え……本当なれば私《わたし》ア嬶《かゝあ》を追ひ出しちまひます、へえ鎧橋《よろひばし》の味噌漉提《みそこしさ》げより醜《わる》いてえひどい顔で、直《す》ぐにさらけだしちまひます、あなたと三|日《か》でも宜《い》いから一|緒《しよ》に成《な》り度《た》いね。と云《い》つて居《を》りますと、突然《いきなり》後《うしろ》の襖《ふすま》をがらりと開《あ》けて這入《はい》つて来《き》た婦人《ふじん》が怒《いか》りの
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