様のお宅《たく》は此処から丁度|四軒目《しけんめ》で、一つ長屋に敵同志《かたきどうし》が住んで居ながら、是《こ》れでは知れない筈《はず》だ、よし/\五日の晩には見現《みあら》わして、三千円の金を取返して、清水の旦那の仇《あだ》を復《かえ》さずに置くものか、と切歯《はぎしり》をしながら其の夜《よ》は帰宅致しまして、十二月五日の夜《よ》明店《あきだな》に忍んで井生森又作の様子を探《さぐ》り、旧悪《きゅうあく》を見顕《みあら》わすという所はちょっと一息《ひといき》つきまして、直《す》ぐに申上げます。

     六

 さて重二郎は母の眼病|平癒《へいゆ》のために、暇さえあれば茅場町の薬師《やくし》へ参詣《さんけい》を致し、平常《ふだん》は細腕ながら人力車《じんりき》を挽《ひ》き、一生懸命に稼ぎ、僅《わず》かな銭《ぜに》を取って帰りますが、雨降り風間《かざま》にあぶれることも多い所から歯代《はだい》が溜《たま》りまして、どうも思うように往《ゆ》き立ちません所へ、清次から十円という纒《まと》まった金を恵まれましたので息を吹返し、まア/\これでお米を買うが宜《よろ》しいとか、店賃《たなちん》を納
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