往《ゆ》くよ」
又「どうせ彼方《あっち》へ帰るんだ、一緒に往《ゆ》こう」
と鍋焼饂飩と立派な男と連れ立って往《ゆ》きます。此方《こなた》に最前《さいぜん》から図《はか》らず立聞きを致しております清次は驚きました。最も細かい事は小声ですから能《よ》くは分りませんが、清水助右衞門を殺した時に三千円を、という事を慥《たし》かに聞いて、さては三千円の金を持って出た清水の旦那を殺した悪人は、彼等《かれら》二人《ににん》に相違ない、何処《どこ》へ行《ゆ》くかと、見え隠《がく》れに跡を附けてまいりますと、一人《ひとり》は川口町四十八番地の店蔵《みせぐら》で、六間間口《ろっけんまぐち》の立派な構《かまえ》の横町《よこちょう》の方にある内玄関《ないげんかん》の所を、ほと/\と叩くと、内から開《ひら》きを明け、奉公人が出迎えて中へ入る。饂飩屋は亀島橋を渡って、二丁目三十番地の裏長屋へ入るから、窃《そっ》と尾《つ》いて往《ゆ》くと、六軒目の長屋の前へ荷を下《おろ》して、がちりっと上総戸《かずさど》を明けて入るから、清次は心の内で、此奴《こいつ》此処《こゝ》に住んでるのか、不思議な事もあるものだ、清水重二郎
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