きに待遠《まちどお》だったろうな、もっと早く出ようと心得たが、何分《なにぶん》出入《でいり》が多人数《たにんず》で、奉公人の手前もあって出る事は出来なかった」
饂「待つのは長いもので、おまけに橋の袂《たもと》だから慄《ふる》え上《あが》るようで、拳骨《げんこつ》で水鼻《みずッぱな》を摩《こす》って今まで待っていたが、雪催《ゆきもよお》しだから大方来なかろう、そうしたら明日《あした》は君の宅《うち》へ往《ゆ》く積りだった」
男「此間《こないだ》君が己《おれ》の宅《うち》へ、まア鍋焼饂飩屋の姿で、ずか/\入って来たから、奉公人も驚き、僕も困ったじゃアないか」
又「何《なん》で困る、君は今川口町四十八番地へあの位な構えをして、其の上春見と人にも知られるような身代になりながら、僕は斯様《こん》な不体裁《ふていさい》だ、身装《みなり》が出来るくらいなら君の処へ無心には往《ゆ》かんが、実は身の置処《おきどころ》がなくって饂飩屋になった又作だ、こゝで千円の資本《もとで》を借り、何か商法に取附《とりつ》くのだ、君も又貸したって、宜《よろ》しいじゃアねえか」
丈「それも宜《い》いが、郵便を遣《よこ》すに
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