は上州前橋の清水という御用達《ごようたし》で、助右衞門様のであったが、何うしてこれがお前の手に入《はい》ったえ」
ま「はい、私《わたくし》は其の清水助右衞門の娘でございます」
 と云われ清次は大《おお》いに驚きましたが、此の者は何者でございますか、次に委《くわ》しく申上げましょう。

     五

 家根屋《やねや》の棟梁清次は、おまきが清水助右衞門の娘だと申しましたに恟《びっく》りいたしまして、
清「えゝ、清水のお嬢様《じょうさん》ですか、これはまアどうも面目次第もねえ」
 とおど/\しながら、
清「まア、お嬢様《じょうさま》、おまえさんはお少《ちい》さい時分でありましたから、顔も忘れてしまいましたが、今年で丁度十四年|前《あと》、私《わっち》が前橋にくすぶっていた時、清水の旦那には一通《ひととお》りならねえ御恩を戴いた事がありましたが、あれだけの御身代のお娘子《むすめご》が、何《ど》うして裏長家《うらながや》へ入っていらっしゃいます、その眼の悪いのはお内儀《かみさん》でございやすか」
ま「はい/\七年|以来《このかた》微禄《びろく》しまして、此様《こん》な裏長屋に入りまして、身上
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