《しんしょう》の事や何かに心配して居りますのも、七年|前《まえ》に父が東京へ買出しに出ましたぎり、今だに帰りませず、音も沙汰もございません故、母は案じて泣いて計《ばか》り居りましたのが、眼病の原《もと》で、昨年から段々重くなり、此の頃はばったり見えなくなりましたから、弟《おとゝ》と私《わたくし》と内職を致して稼ぎましても勝手が知れませんから、何をしても損ばかりいたし、お恥かしい事でございますが、お米さえも買う事が出来ません所から、お金の抵当《ていとう》に此処《こゝ》の伯母さんに此の観音様を取られましたから、母は神仏《かみほとけ》にも見離されたかと申して泣き続けて居りますから、どうか母の気を休めようと思い、旦那を取ると申しまして、実は伯母さんから観音様を取返したのでございます」
清「どうも誠にどうも思いがけねえ事で、水の流れと人の行末《ゆくすえ》とは申しますが、あれ程な御大家《ごたいけ》が其様《そんな》にお成りなさろうとは思わなかった、お父様《とっさま》は七年|前《あと》国を出て、へいどうも、何しろお母《っか》さんにお目にかゝり、委《くわ》しいお話も伺《うかゞ》いますが、私《わっち》は家
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