した事だが、堪忍しておくれよ、まア宜く来たねえ」
ま「はい、先程は折角御親切に云って下さいましたのに、承知致しませんでお腹立《はらだち》もございましょうが、まさか母や弟《おとゝ》の居ります前で結構な事でございますから、何卒《どうぞ》妾にお世話を願いますとは伯母さん、申されませんでしたが、実に今年の暮も往《ゆ》き立ちませんで、何かと母も心配して居りますから、私の様《よう》な者でも一晩お相手をして些《ちっ》とでもお金を下されば、母の為と思いまして、どの様《よう》にも御機嫌を取りましょうから、貴方《あなた》宜《よ》いお方をお世話なすって、先程母のお預け申した観音様のお厨子を返しては下さいませんか」
 と云われ、お虎はほく/\悦《よろこ》び。
虎「何かい、お前は彼《あ》のお母《っか》さんの為に…どうも感心、宜《よ》くまア本当に孝行だよ、仕方がないから諦めたのだろうが、否《いや》なお爺さんでは私も無理にとも云い難《にく》いが、鉄砲洲の屋根屋の棟梁で、江戸屋の清次さんという粋《いき》な女惚れのする人が、お前の親孝行で、心掛《こゝろがけ》が宜く、器量も好《い》いから、己《おら》アほんとうに女房《にょ
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