層まア立派な観音さま、何《なん》だか知りませんが、まア/\金の抵当《かた》に預って置きましょう、成程|丈《たけ》も一寸八分《いっすんはちぶ》もありましょう、これなれば五円や十円のものはあろう」
と云いながら艶消《つやけ》しの厨子《ずし》へ入ったまゝ懐へ入れて帰りました。お虎|婆《ばゞあ》は夜《よ》に入《い》って楽《たのし》みに寝酒を呑んでいます所へ入って来たのは、鉄砲洲新湊町《てっぽうずしんみなとちょう》に居りまする江戸屋《えどや》の清次《せいじ》という屋根屋の棟梁《とうりょう》で、年は三十六で、色の浅黒い口元の締った小さい眼だが、ギョロリッとして怜悧相《りこうそう》で垢脱《あかぬ》けた小意気《こいき》な男でございます。形《なり》は結城《ゆうき》の藍微塵《あいみじん》に唐桟《とうざん》の西川縞《にしかわじま》の半纒《はんてん》に、八丈の通《とお》し襟《えり》の掛ったのを着て門口《かどぐち》に立ち。
清「お母《っか》ア宅《うち》か、お虎宅かえ」
虎「誰だえ、おや棟梁さんか、お上《あが》んなさい」
清「滅法《めっぽう》寒くなったのう、相変らず酒か」
虎「棟梁さんは毎《いつ》も懐手《ふとこ
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