ば、何卒《どうぞ》帰って親子|四人《よったり》顔が合わしていと、無理な願掛《がんが》けをして居りやんした、此の観音さまは上手《じょうず》な彫物師《ほりものし》が国へ来た時、良人が注文して彫らせた観音さまで金無垢《きんむく》でがんすから、潰《つぶ》しにしても大《えら》く金になると、良人も云えば人さまも云いやすが、金才覚《かねさいかく》の出来るまで三円の抵当《かた》に此の観音さまをお厨子《ずし》ぐるみ預かって、どうか勘弁して下さいやし」
ま「お母《っか》さん、とんでもない事を仰《おっ》しゃる、それを上げて済みますか、命から二番目の大切な品では有りませんか」
母「えゝ命から次の大事なものでも拠《よんどころ》ない、斯《こ》ういう切迫詰《せっぱつま》りになって、人の手に観音様が入ってしまうのは、親子三人|神仏《かみほとけ》にも見離されたと諦めて、お上げ申さなければ話が落着《おちつ》かねえではないか、あゝ早く死にてい、私《わし》が死ねば二人の子供も助かるべいと思うが、因果と眼も癒《なお》らず、死ぬ事も出来ましねえ、お察しなすっておくんなさい」
と泣き倒れまする。
虎「誠にお気の毒ですねえ、おや大
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