の皿のように禿《は》げて、附け髷《まげ》をして居ますから、お辞儀をすると時々髷が落ちまする、頑丈《がんじょう》な婆さんですから、金がなけりゃ此れを持って往《ゆ》くと云いながら、彼《か》の損料蒲団へ手を掛けようとすると、屏風の中《うち》から母が這《は》い出して。
母「御尤《ごもっと》もでございますが、私の宅《うち》の娘は年は二十五にもなり、体格《なり》も大きいけれども、是迄屋敷奉公をして居りやしたから、世間の事を知らねえ娘で、中々人さまの妾になって旦那さまの機嫌気づまを取れる訳でもございやせん、と申して、お借り申した三円のお金は返さねえでは済みませんが、金はなし、損料布団を取られては私が誠に困りますから」
と云いながら手探《てさぐ》りにて取出したのは黒塗《くろぬり》の小さい厨子《ずし》で、お虎の前へ置き。
母「これは私《わし》が良人《おやじ》の形見でございまして、七ヶ年|前《あと》出た切《ぎ》り行方《ゆくえ》が知れませんが、大方死んだろうと考えていますから、良人の出た日を命日として此の観音さまへ線香を上げ、心持《こゝろもち》ばかりの追善供養《ついぜんくよう》を致しやして、良人に命があら
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