いのを見かけ、無理に立替えて返せと仰《おっ》しゃっても致方《いたしかた》がございません」
虎「そんな不理窟《ふりくつ》を云ったっていけないよ、損料屋が蒲団を持っていったら此の寒いのに病人を裸体《はだか》で置くつもりかえ、さっさと返して下さいな」
重「小母《おば》さんお待ちなすって下さい、姉《あね》さまが人さまの妾にはならないと云うのも御尤《ごもっと》もな次第、と云って貴方《あんた》に返す金はありやせんから、何卒《どうぞ》私《わし》を其の旦那の処で、姉の代りに使って下さいますめえか」
虎「おふざけでないよ、お前さんがいくら器量が好《よ》くても、今は男色《かげま》はお廃《はい》しだよ」
重「いゝえ左様ではございませぬ、どのような御用でもいたしやすから願いやす」
婆「これサ、旦那の処で一月《ひとつき》働いたって三円の立前《たちまい》は有りゃアしねえ[#「しねえ」は底本では「しえね」と誤記]、一日弐拾銭出せば力のある人が雇えるから、お前さんなぞを使うものかねえ、返して下さいよ」
と云って中々聞き入れません。此の婆《ばゞあ》は元は深川の泥水育ちのあば摺《ず》れもので、頭の真中《まんなか》が河童
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