て上げますともさ」
虎「それじゃア持合《もちあわ》せていますから私が立替えて上げるが、端銭《はした》はまけて置いておくれな、明日《あした》一円上げますからさ」
損「宜《よ》うございます、八十銭の損だが、お虎さんにめんじて負けて置きましょう、そんならさっぱりとしたのと取替えて来ます、左様なら」
虎「屹度《きっと》持って来ておくれ、左様なら」
 と損料屋の後姿《うしろすがた》を見送って、おまきに向い、
虎「まアおまきさん御覧よ、酷《ひど》い奴じゃないか、彼奴《あいつ》はもと番太郎で、焼芋《やきいも》を売ってたが、そのお前芋が筋が多くて薄く切って、そうして高いけれども数が余計にあるもんだから、子供が喜んで買うのが売出しの始めで、夏は金魚を売ったり心太《ところてん》を売ったりして、無茶苦茶に稼いで、堅いもんだから夜廻りの拍子木《ひょうしぎ》も彼《あ》の人は鐘をボオンと撞《つ》くと、拍子木をチョンと撃つというので、ボンチョン番太と綽名《あだな》をされ、差配人《さはいにん》さんに可愛《かわい》がられ、金を貯《た》めて家《うち》を持ち、損料と小金《こがね》を貸して居るが、尻《けつ》の穴が狭くて仕様の
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