困ると云うくらいだから、料銭の払えないのは尤《もっと》もな話だのに、可愛《かわい》そうに病人が被《き》ているものを剥《は》いで往《ゆ》くとは余《あんま》り慈悲《なさけ》ないじゃないか」
損「お虎さん、お前さんは知らないのだが、蒲団を貸して二ヶ月料銭を払わないから、損料代が四円八十銭溜って居りますよ」
重「へい、そんなになりますかえ」
損「なりますとも、一晩《ひとばん》四布《よの》が五銭に、三布布団《みのぶとん》が三銭、〆《しめ》八銭、三八《さんぱ》二円|四十銭《しじっせん》が二ヶ月で四円八十銭に成りますわねえ」
虎「高いねえ、こんな穢《きたな》い布団でかえ」
損「穢い布団じゃアなかったのだが、段々此の人達が被古《きふる》して汚《よご》したので、前は新しかったのです」
虎「成程|御尤《ごもっと》もですが、其処《そこ》がお話合《はなしあい》で、私も斯《こ》うやって仲へ入り、口を利いたもんだから三円だけ立替《たてか》えて上げたら、お前さん此の布団を貸してやって下さるかえ、此の汚れたのは持って帰って小綺麗《こぎれい》なのと取替えて持って来て貸して下さるか」
損「それは料銭さえ払って下されば貸し
前へ 次へ
全151ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング