も》う少々貸して置いて下さいまし」
損「其方《そっち》も困るだろうが私も困らアね、引続いて長い間|留《と》めて置き、蒲団は汚《よご》し料銭は少しも払わず、何《ど》うにも斯《こ》うにも仕方がないから、私《わたしゃ》ア蒲団を持って往《ゆ》きますよ」
ま「何卒《どうぞ》御勘弁を願います」
損「勘弁は出来ません」
と云いながら、ずか/\と慈悲容赦《なさけようしゃ》も荒々しく、二枚折《にまいおり》の反故張屏風《ほごばりびょうぶ》を開け、母の掛けて居りまする四布蒲団《よのぶとん》を取りにかゝりますから、
重「何をなさる、被《き》て居《い》るものを取ればまるで追剥《おいはぎ》ですなア」
損「これ何をいうのだ、私の物を私が持って往《ゆ》くのに追剥という事があるものか、料銭が溜《たま》ったから蒲団を持って往くのが追剥ぎか」
重「誠に相済みません、何卒《どうぞ》御勘弁を」
と云っているのを、同じ長屋にいるお虎《とら》という婆さんが見兼《みかね》て出てまいり、
虎「まアお待ちなさいな、斯《こ》うやってお母《っか》さんが眼が悪く、兄《にい》さんが一生懸命に人力を挽《ひ》いて稼いでも歯代《はだい》がたまって
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