でございます」
重「此処《こゝ》に一円二十銭ありやんすが、これをお持ちなすってお帰《けえ》んなすって、あとの米を又少しの間拝借が出来ますならば、命から二番目の大事な金でございやすが、これを上げますから、あとの米を壱円《いちえん》べい送って戴きていもんでござりやす」
米「壱円弐拾銭あるのか、篦棒《べらぼう》らしい、商売だからお払いさえ下されば米は送ります」
と金を※[#「※」は「檢」の「きへん」の部分が「てへん」、第3水準1−84−94、527−7]《あらた》め請取《うけとり》を置いて出て往《ゆ》きますと、摺違《すれちが》って損料屋《そんりょうや》が入ってまいりました。
ま「おや、又」
損「なんです、おや又とは」
ま「いえ、あの能《よ》くいらっしゃいましたと申したのでございます」
損「嘘を云いなさんな、今米屋が帰った跡へ直《すぐ》に私が催促《さいそく》に来たから、おや又と云ったのだろう、借金取を見ておや又とは甚《はなは》だ失敬だ、私も困りますから返して下さい、料銭《りょうせん》を払わないと止《や》むを得ないから蒲団を持って往《ゆ》くよ」
ま「でも此の通り寒くなって母が困りますから、最《
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