乗《うわのり》をして古河の船渡《ふなと》へ上《あが》り、人力車へ乗せて佐野まで往って仕事を仕ようとすると、其の車夫は以前長脇差の果《はて》で、死人《しびと》が日数《ひかず》が経《た》って腐ったのを嗅《か》ぎ附け、何《な》んでも死人に相違ないと強請《ゆすり》がましい事を云い、三十両よこせと云うから、止《やむ》を得ず金を渡し、死人を沼辺《ぬまべり》へ下《おろ》して火葬にして沼の中へ投《ほう》り込んでしまったから、浮上《うきあが》っても真黒《まっくろ》っけだから、知れる気遣《きづか》いないが、彼《か》の様子を知った車夫、生かして置いてはお互いの身の上と、罪ではあるが隙《すき》を窺《うかゞ》い、沼の中へ突き落《おと》し、這《は》い上《あが》ろうとする所を人力車《くるま》の簀葢《すぶた》を取って額を打据《うちす》え、殺して置いて、其の儘《まゝ》にドロンと其処《そこ》を立退《たちの》き、長野県へ往ってほとぼりの冷《さめ》るのを待ち、石川県へ往ったが、懐に金があるから何もせず、見てえ所は見、喰いてえ物は喰い、可なり放蕩《ほうとう》も遣《や》った所が、追々《おい/\》金が乏《とぼ》しくなって来たから、
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