商法でも仕ようと思い、坂府《さかふ》へ来た所、坂府は知っての通り芸子《げいこ》舞子《まいこ》は美人|揃《ぞろ》い、やさしくって待遇《もてなし》が宜《い》いから、君から貰った三百円の金はちゃ/\ふうちゃに遣《つか》い果《はた》して仕方なく、知らん所へ何時《いつ》まで居るよりも東京へ帰ったら、又どうかなろうと思い、早々《そう/\》東京へ来て、坂本二丁目の知己《しるべ》の許《もと》に同居していたが、君の住所は知れずよ、永くべん/\として居るのも気の毒だから、つい先々月亀島町の裏長屋を借り請《う》け、今じゃア毎夜|鍋焼饂飩《なべやきうどん》を売歩《うりある》く貧窮然《ひんきゅうぜん》たる身の上だが、つい鼻の先の川口町に君が是《こ》れだけの構いをして居るとは知らなかったが、今日はからず標札を見て入って来たのだが、大《たい》した身代になって誠に恐悦《きょうえつ》」
丈「あれからぐっと運が向き、為《す》る事なす事|間《ま》がよく、是まで苦もなく仕上げたが、見掛けは立派でも内幕は皆|機繰《からくり》だから、これが本当の見掛倒しだ」
又「金は無いたって、あるたって、表構《おもてがま》えで是だけにやってる
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