から、お留守だと申しましたところが、お嬢さまがお逢わせ申せ/\と仰《おっ》しゃいまして困りました」
丈「居ると云ったら仕方がないから通せ」
利「此方へお入り」
重「はい/\」
 と怖々《こわ/″\》上《あが》って縁側伝いに参りまして、居間へ通って見ますと、一間《いっけん》は床の間、一方《かた/\》は地袋《じぶくろ》で其の下に煎茶《せんちゃ》の器械が乗って、桐の胴丸《どうまる》の小判形《こばんがた》の火鉢に利休形《りきゅうがた》の鉄瓶《てつびん》が掛って、古渡《こわたり》の錫《すゞ》の真鍮象眼《しんちゅうぞうがん》の茶托《ちゃたく》に、古染付《ふるそめつけ》の結構な茶碗が五人前ありまして、朱泥《しゅでい》の急須《きゅうす》に今茶を入れて呑もうと云うので、南部の万筋《まんすじ》の小袖《こそで》に白縮緬《しろちりめん》の兵子帯《へこおび》を締め、本八反《ほんはったん》の書生羽織《しょせいばおり》で、純子《どんす》の座蒲団《ざぶとん》の上に坐って、金無垢《きんむく》の煙管《きせる》で煙草を吸っている春見は今年四十五歳で、人品《じんぴん》の好《い》い男でございます。只《と》見ると重二郎だから恟《
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