の忰《せがれ》だから驚きましたのは、七年|前《あと》自分のお父《とっ》さんが此の人のお父《とっ》さんを殺し、三千円の金を取り、それから取付いて此様《こんな》に立派な身代になりましたが、此の重二郎はそれらの為に斯《か》くまでに零落《おちぶ》れたか、可愛《かわい》そうにと、娘気《むすめぎ》に可哀《かあい》そうと云うのも可愛《かわい》そうと云うので、矢張《やはり》惚《ほ》れたのも同じことでございます。
い「あの利助や」
利「へい/\、出ちゃいけませんよ、/\」
い「あのお父《とっ》さんは奥においでなさるから其の方《かた》にお逢わせ申しな」
利「お留守だと云いましたよ、いけませんよ」
い「そんな事を云っちゃアいけないよ、お前は姿《なり》のいゝ人を見るとへい/\云って、姿の悪い人を見ると蔑《さげす》んでいけないよ、此の間も立派な人が来たから飛出して往って土下座したって、そうしたら菊五郎《きくごろう》が洋服を着て来たのだってさ」
利「どうも仕方がないなア、此方《こちら》へお入《はい》り」
 と通しまして直《すぐ》に奥へまいり、
利「えゝ旦那様、見苦しいものが参って旦那様にお目にかゝりたいと申します
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