たいと、何か書いたものを持って来て何《なん》と云っても帰らないから、五十銭も遣《や》って、後《あと》で披《あ》けて見ると、子供の書いたような反故《ほご》であることなどが度々《たび/\》ありますから、お気の毒だが主人はお目にかゝる訳にはまいりません」
重「縁のない所からまいった訳ではありません、前橋《めえばし》竪町の清水助右衞門の忰重二郎が参ったとお云いなすって下さいまし」
利「お気の毒だが出来ません、それに旦那様は御不快であったが、今日はぶら/\お出掛になってお留守だからいけません」
重「どうか其様《そん》なことを仰《おっ》しゃらないでお取次を願います」
利「お留守だからいけませんよ」
 と頻《しき》りに話をしているのを、何《なん》だかごた/\していると思って、そっと障子《しょうじ》を明けて見たのは、春見の娘おいさで、唐土手《もろこしで》の八丈《はちじょう》の着物に繻子《しゅす》の帯を締め、髪は文金《ぶんきん》の高髷《たかまげ》にふさ/\と結《ゆ》いまして、人品《じんぴん》の好《よ》い、成程八百石取った家のお嬢様のようでございます。今障子を開けて、心付かず話の様子を聞くと、清水助右衞門
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