から智慧《ちえ》も出ず、車を挽《ひ》くより外《ほか》に何も仕方がないと、辻へ出てお安く参りましょうと云って稼いで居りましたが、何分にも思わしき稼ぎも出来ず、遂《つい》に車の歯代《はだい》が溜《たま》って車も挽けず、自分は姉と両人で、二日《ふつか》の間は粥《かゆ》ばかり食べて母を養い、孝行を尽《つく》し介抱いたして居りましたが、最《も》う世間へ無心に行《ゆ》く所もありませんし、何《ど》うしたら宜《よろ》しかろうと云うと、人の噂に春見丈助は直《じ》き近所の川口町にいて、大《たい》した身代に成ったという事を聞きましたから、元々|馴染《なじみ》の事ゆえ、今の難渋を話して泣付《なきつ》いたならば、五円や十円は恵んで呉れるだろうというので、姉と相談の上重二郎が春見の所へ参りましたが、家の構えが立派ですから、表からは憶《おく》して入れません。横の方へ廻ると栂《つが》の面取格子《めんとりごうし》が締《しま》って居りますから、怖々《こわ/″\》格子を開けると、車が付いて居りますから、がら/\/\と音がします。驚きながら四辺《あたり》を見ますと、結構な木口《きぐち》の新築で、自分の姿《なり》を見ると、単物
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