たかべい》が有りまして、九尺《くしゃく》の所に内玄関《ないげんかん》と称《とな》えまする所があります。実に立派な構えで、何一つ不自由なく栄燿栄華《えいようえいが》は仕ほうだいでございます。それには引換え清水助右衞門の忰《せがれ》重二郎は、母|諸共《もろとも》に千住《せんじゅ》へ引移りまして、掃部宿《かもんじゅく》で少し許《ばか》りの商法を開《ひら》きました所が、間《ま》が悪くなりますと何をやっても損をいたしますもので、彼《あれ》をやって損をしたからと云って、今度は是《こ》れをやると又損をして、遂《つい》に資本《しほん》を失《なく》すような始末で、仕方がないから店をしまって、八丁堀亀島町《はっちょうぼりかめじまちょう》三十番地に裏屋住《うらやずま》いをいたして居りますと、母が心配して眼病を煩《わずら》いまして難渋《なんじゅう》をいたしますから、屋敷に上げてあった姉を呼戻し、内職をして居りましたが、其の前年《まえのとし》の三月から母の眼がばったりと見えなくなりましたゆえ、姉はもう内職をしないで、母の介抱ばかりして居ります。重二郎は其の時廿三歳でございますが、お坊さん育ちで人が良うございます
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